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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
線上閱讀折口 信夫《死者の書(ししゃのしょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 62,340 字 · 126 頁
十九
思いつめてまどろんでいる中に、郎女の智慧が、一つの閾を越えたのである。
十九
望の夜の月が冴えて居た。若人たちは、今日、郎女の織りあげた一反の上帛を、夜の更けるのも忘れて、見讃して居た。
この月の光りを受けた美しさ。
のようで、韓織のようで、――やっぱり、此より外にはない、清らかな上帛じゃ。
乳母も、遠くなった眼をすがめながら、譬えようのない美しさと、ずっしりとした手あたりを、若い者のように楽しんでは、撫でまわして居た。
二度目の機は、初めの日数の半であがった。三反の上帛を織りあげて、姫の心には、新しい不安が頭をあげて来た。五反目を織りきると、機に上ることをやめた。そうして、日も夜も、針を動した。
長月の空は、三日の月のほのめき出したのさえ、寒く眺められる。この夜寒に、俤人の肩の白さを思うだけでも、堪えられなかった。
裁ち縫うわざは、あて人の子のする事ではなかった。唯、他人の手に触れさせたくない。こう思う心から、解いては縫い、縫うてはほどきした。現し世の幾人にも当る大きなお身に合う衣を、縫うすべを知らなかった。せっかく織り上げた上帛を、裁ったり截ったり、段々布は狭くなって行く。