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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
彼は自分の野性を縦横無尽に発揮して、それを生き甲斐のある仕事と思っていた。
それが去年の春からがらりと変った。自分でも不思議に思うほどに変ってしまった。それは八橋から唯ひとこと、こう言われたからであった。
八橋があるとき彼の商売を訊くと、彼は野州佐野の博奕打ちで、三、四十人の子分を持っていると自慢らしく答えた。すると、八橋はにやりと笑った。
「ほかにもいろいろの渡世がありんしょう。喧嘩商売、よしなんし。あぶのうおざんす」
なるほど危ない商売には相違なかった。博奕打ちに喧嘩は付き物である。次郎左衛門はその命賭けの危ないなかに興味を求めていた。世間にはほかにいろいろの渡世があることも、喧嘩商売のあぶないことも、いまさら八橋の意見を聞くまでもなかった。そんなことは足利の姉からも、分家の人びとからも耳うるさいほどに聞かされていた。
「あぶのうおざんす」
この一句が今夜はふかく彼の胸に食い入った。相手はどれほどの親切気で言い聞かしたのか知れないが、次郎左衛門は心からその親切を感謝した。自分の生命を賭けるような危ない商売はもうふっつりと思い切ろうと女に誓った。
「今度来るときには堅気の百姓で来る」