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どろぼうとわかとの

泥棒と若殿

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《泥棒と若殿(どろぼうとわかとの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,601 字 · 41 頁

青空文庫

五

「家来たちがおれの命をちぢめようとしているのに、盗賊はおれに飯を食わせて呉れた、妙な世のなかだ」

成信はこう呟やいて、男の置いていった包をあけてみた。中には味噌をまぶした大きな握り飯が三つはいっていた。

五

うす暗くなってから男が帰って来た。

「おう今けえったぜ」男は広縁のところからそう叫んだ、「おそくなっちまった、腹が減ったろう、いますぐ飯にするからな」

裏へまわってゆく男のうしろ姿をみおくりながら、成信はふと胸の温たまるような感動をさそわれた、自分では理解しがたい、温たかく胸のうるおうような感動である。彼は久しぶりで机に向い、それへ両肱をついて、厨口のもの音をなつかしいような気持で聞いていた。

食膳は味噌汁と飯のほかに、鉢いっぱいの梅干が出ていた。

「これもみんな買って来たものか」

「よせやい、いやなことを云うな」男は眼を三角にし、口をとがらした、「にんげんひとり抱えて、おめえ、泥棒なんぞでやってゆけるもんじあねえや」

「――はあ、そういうものか」

「独り身ならそれあ、まあ泥棒でも食っていけるかもしれねえ、けれどもおめえという者を抱えてみりあ、まじめに稼がなくっちゃあ追っつきあしねえや」