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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき
津田左右吉歴史論集
津田 左右吉
線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁
を、八年と十年とに「平民文学の時代」の上巻と中巻とを出した。ところが、その下巻とすることになった明治維新を中心としての一時代の部分は、今なお書かないままでいる。こういうものを書くようになったのは、大正十年からは二十年あまりも前に、維新のことを考えてみようとしたのがそもそもの発端であり、それから引きつづいたしごとであったのに、その最初の出発点まで立ちもどらずして、しごとが中絶したのである。これにはいろいろの事情があったので、出版した書肆が破産したり大震災のために紙型が焼けたりしたことも、その一つであるが、ぼく自身にすべきことが他の方面に生じ、興味の中心がむしろそちらに移ったからでもある。
満鉄における満鮮史の研究は、大正元年だか二年だかに、会社の事情でうちきりとなり、東京帝大の文学部の名で研究報告を続刊し、その出版費を会社から提供する、という形で纔かにその生命をつなぐことができた。それでぼくも毎年その報告に何かの論文を載せることになり、始めのうちは満洲史上のいくつかの問題を取扱ったものを、そのために書いた。ところが、そういうことをしているうちに、シナ人の思想とか生活態度とかいうことから考えてかからねば、何につけてもほんとうのことがわからぬように思われて来たので、次第に問題をその方に移すようになった。