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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
線上閱讀海野 十三《深夜の市長(しんやのしちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 頁
灯のせいもあるであろうが、顔色は黄疸ではないかと思われるほど真ッ黄色だった。鼻は細根の乾し蘿蔔を思わせるように、痩せて乾枯らびていた。下眼瞼はだらりと垂れて、刷毛で書いたように、幅の広い黒い隈ができていた。しかし小さい黒眼をもった両の眼球だけは、なんとなく炯々たる光を放っていた。
「……寒暖計だとか湿度計だとかいう器械で測るよりは、人間の感覚で推知する方が、本当の数値を云いあらわす……ことを御存知でしょうネ。つまりそれで僕は知りたいのですよ。昨夜と今夜との外気の温度の比較をネ。……」
「そうですねえ、今夜の方が昨夜よりすこしばかり寒いように思いますよ」
といった、途端に僕は昨夜の事件をまた新に思い出して、慄然とした。
「ああ、それで決りました」と速水輪太郎は大きなジェスチャアをしながら、「実はそいつが分らないと、二分十六秒ばかりの大きな誤差が出てきて、答を決めかねるのでした。いや、なるほど……」
こう書いてくると、いかにも速水氏は、僕の顔を睨みながら、得々として口を利いているように感ずるであろうけれども、本当のことを云えば、速水氏は僕が部屋に入ったときから、唯の一度も僕の顔を見ようとはしないのだった。