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まきのとみたろうじじょでん
牧野富太郎自叙伝
牧野 富太郎
線上閱讀牧野 富太郎《牧野富太郎自叙伝(まきのとみたろうじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,045 字 · 185 頁
植物に感謝せよ
植物に感謝せよ
植物と人生、これはなかなかの大問題で、単なる一篇の短文ではその意を尽すべくもない、堂々数百頁の書物が作り上げらるべき程その事項が多岐多量で且つ重要なのである。
ところがここには右のような竜頭的な大きなものは今にわかに書く事も出来ないので、ほんの蛇尾的な少しの事を書いて見る。
世界に人間ばかりあって植物が一つも無かったならば、「植物と人生」というような問題は起りっこがない。ところがそこに植物があるのでここにはじめてこの問題が抬起する。
人間は生きているから食物を摂らねばならぬ、人間は裸だから衣物を着けねばならぬ。人間に風雨を防ぎ寒暑を凌がねばならぬから家を建てねばならぬので、そこではじめて人間と植物との間に交渉があらねばならぬ必要が生じて来る。
右のように植物と人生とは実に離す事の出来ぬ密接な関係に置かれてある。人間は四囲の植物を征服しているというだろうが、またこれと反対に植物は人間を征服しているといえる。そこで面白い事は、植物は人間がいなくても少しも構わずに生活するが、人間は植物が無くては生活の出来ぬ事である。そうすると、植物と人間とを比べると人間の方が植物より弱虫であるといえよう。