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まきのとみたろうじじょでん

牧野富太郎自叙伝

牧野 富太郎

線上閱讀牧野 富太郎《牧野富太郎自叙伝(まきのとみたろうじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,045 字 · 185 頁

青空文庫

大震災

私は先生遺愛の硯を乞い受け、今でも坐右に置いている。また大学で同じ植物学を専攻している中村浩君は先生の次男である。

私は『植物図説』の刊行を断乎としてやり遂げる決心でいる。私はその巻頭に中村先生の遺徳を偲んで、図説刊の由来を銘記し、霊前に捧げようと考えている。

大震災

震災の時は渋谷の荒木山にいた。私は元来天変地異というものに非常な興味を持っていたので、私はこれに驚くよりもこれを心ゆく迄味わったといった方がよい。当時私は猿又一つで標品を見ていたが、坐りながらその揺れ具合を見ていた。そのうち隣家の石垣が崩れ出したのを見て家が潰れては大変と庭に出て、庭の木につかまっていた。妻や娘達は、家の中にいて出て来なかった。家は幸いにして多少の瓦が落ちた程度だった。余震が恐いといって皆庭に筵を敷いて夜を明したが、私だけは家の中にいて揺れるのを楽しんでいた。後に振幅が四寸もあったと聴き、庭の木につかまっていてその具合を見損ったことを残念に思っている。その揺っている間は八畳座敷の中央で、どんな具合に揺れるか知らんとそれを味わいつつ座っていて、ただその仕舞際にチョット庭に出たら地震がすんだので、どうも呆気ない気がした。