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まきのとみたろうじじょでん
牧野富太郎自叙伝
牧野 富太郎
線上閱讀牧野 富太郎《牧野富太郎自叙伝(まきのとみたろうじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,045 字 · 185 頁
もしあれが続いていたら、自分でいうのも訝しいが、世界に出しても恥しくなくまた一面日本の誇りにもなるものが出来たろうと、今でも腕を撫して残念に思っている次第である。その書は大学にあるから誰れでも一度見て下さい。
大正五年の頃、いよいよ困って殆んど絶体絶命となってしまったことがある。仕方がないので、標品を西洋へでも売って一時の急を救おう――こう覚悟したのであるが、これを知った農学士の渡辺忠吾氏が大変親切に心配してくれて、この窮状を「東京朝日新聞」に出された。大切な学術上の標品が外国へ売られようとしているといって、それをひどく惜しむような記事だったが、これが大阪の「朝日新聞」に転載されて、図らずも神戸に二人の篤志家が現れた。一人は久原房之助氏で、今一人は池長孟という人である。池長氏はこの時京都帝大法科の学生だという事であったが、新聞社で相談をしてくれた結果、この池長氏の好意を受ける事になって、池長氏は私のために二万円だか三万円だかを投出して私の危急を救うて下された。永い間のことであり私の借金もこんな大金になっていたのである。その上毎月の生活費を支持しなくては、また借金が出来るばかりだからというので、池長氏は以後私のためにそれを月々償って下される事になった。