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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁
が、そのとき、合図とともに五頭の馬はスタートを切っていた。喊声は地をゆるがして起った。半周にしてすでにはやく他の三頭の馬は二三メートルも引き離され、タカムラとテルミドールとのせり合いになった。
――タカムラ!
――テルミドール!
声援は嵐のようだった。タカムラはテルミドールを抜いた。と思ううちに半馬身ほど抜かれ、さらにずっと抜かれるかと見るまに、反対に半馬身先に立つ――と思うと……まるでシーソーゲーム。――だが、最後の三周目だった、タカムラはとうとう断乎として相手を抜き、疾風の如くゴールイン!
仙太は狂めく嵐の中に、夢中になって何度か躍り上り、涙を流してどなりわめいた。付近にいた何人かの人の足を踏んで、手ひどく抗議されなかったら、彼はもっともっと狂っていたことだったろう。
やがて彼は我にかえった。現金引換所では十円札や百円札が広告のビラのように引掴まれた。
――ああ俺は? 俺は?
仙太はぽかんとしてしまった。一万円ばかり吹っ飛ばしてしまったような気がした。その時、もしもしと言って肩を叩くものがある。誰かと思って振りかえると、それは知った顔ではなく、どこかの――おそらく東京からでもやって来た立派な紳士だった。