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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁
博士だって、弁護士だって何が怖いことあるもんか。だが、まア、聞け。あれだぜ、若旦那のいう工場かせぎも満更でねえ案だで。これからの世の中は、何といってもその工業というやつさ。百姓ではいくら骨を折っても追いつく沙汰ではねえからな。俺もこれ、三期ぶっとおしに村長をしてみて、つくづくそう思ったよ。」
大きな松の根ぼっくのぷすぷす燃えている炉の正面にどっかと胡座をかいて、六十歳にしてなお若い妾を囲っておくという評判の前村長は、つるつるに剃った頬のあたりをしきりに撫で廻した。
続いて前村長は、農業衰退の必然性と、重工業、軍需工業隆昌についての世界的な見透しに関して高邁な意見を一くさり述べてから、少しく声を低めて、
「古谷は君、掛け合っても無駄だぜ。実は、よ、あれは君、若造が馬鹿造だから、破産したんだぜ……」
呵々大笑して、「お蔭で、この山間の村々でも、約三百軒の貧農、中農が、まき添えを喰って倒産する。だが、それも時代の勢いというもので、何とも仕方がない。まずまず身代はたかれて百姓が出来なくなったら、工場だ、工場だ……」
だが、儀作の耳へはそれは入らなかった。いや、入るには痛いほど入っても、忰がかえるまで、どんなことがあろうと商売がえするつもりはないと告白した。