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かがくとぶんがく
科学と文学
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《科学と文学(かがくとぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 頁
こういう意味において、源氏物語や落窪物語のようなものは、中等学校の歴史教科書よりも、文化国の大新聞の記事よりも、はるかに忠実な記録であり実証的な資料として役立つものである。おもしろいことには、そういう価値の多少がまたほとんど直ちに普通にいわゆる文学的芸術的価値の多少と一致するように思われるのである。
歴史は繰り返す。方則は不変である。それゆえに過去の記録はまた将来の予言となる。科学の価値と同じく文学の価値もまたこの記録の再現性にかかっていることはいうまでもない。
それのみではない。科学が未知の事象を予報すると同様に、文学は未来の新しい人間現象を予想することも可能である。
想像力の強い昔の作者の予想した物質文明機関で現代にすでに実現されているものがはなはだ多い。電燈でも、飛行機でも、潜水艇でもまたタンク戦車のごときものすら欧州大戦よりずっと以前に小説家によって予想されている。市井の流行風俗、生活状態のようなものはもちろん、いろいろな時代思潮のごときものでも、すぐれた作者の鋭利な直観の力で未然に洞察されていた例も少なくないであろう。未来の可能性は、それがどんなに現在の凡人に無稽に見えても実は現在の可能性のほんのわずかの延長にしか過ぎないからである。