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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《秘境の日輪旗(ひきょうのにちりんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 頁

青空文庫

黒い兄

「じゃあ、僕たちの方も危いところだったんですね」

「いや、抵抗しない相手を攻撃するのは日本の武士道が許さんし、どんな強敵でも刃向うものは徹底的にやっつけるのが、日本の海軍の伝統です」

英夫と祥子は、この艇長の紹介で士官や、水兵さんとも親しくなった。

司令官のはからいで、水雷艇が二人を、シンガポールまで送りとどけてくれることになった。せっかく親しくなったひとびとに別れるのがつらかったので、旗艦に乗って行くようにすすめてくれた司令官に、英夫たちから申し出たのだ。

黒い兄

セレター軍港には、日本の真夏のような陽が照っていた。

青々としているはずのゴムの林が、赤黒くすすけて見えた。戦いのあとで、日本軍の爆弾や砲弾を浴びた石油タンクが何日も燃えつづけ、煤煙を吸ったスコールに打たれて、煤けてしまったのだ。

赤錆びてゆがんだ石油タンクや、打ちこわされた軍事施設が、ところどころに残骸をさらしていた。島のどこかでは、まだ燃えつづけているタンクもあるらしく、黒い煙が、空高く濛々と立上っていた。

「ほら、あれが世界一を誇った浮ドックです」

艇長が指さしたあたりに、すっかり海中に打ち沈められた浮ドックらしいものが見えた。