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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 頁

青空文庫

と云ったのは板倉のことに違いなく、昨夜こいさんは死んだあの男の夢を見て魘されていたのである。そう云えば、たしか板倉の死んだのは去年の五月であったから、そろそろ一周忌が廻って来る時分ではなかろうか。こいさんは、あの男の死に方が尋常でなかったので、それが余程気に懸っているらしく、未だに毎月岡山の田舎まで墓参りに行くのも、一つはそのためなのであろうと察しられるが、ちょうど折も折、あの男の一周忌が近づいた時に重い病気に取り憑かれて、而もあの男の恋敵であった啓坊の家で寝付くようになったと云うことは、神経に病まない筈はあるまい。こいさんはああ云う風な底に底のある性格であるから、お腹の中は何を考えているのやら容易に窺えないけれども、きっとこの間からそのことが胸にあったので、何かそれに関係のある夢を見たのであろう。尤もこれは全く自分の想像であるから、当っているかどうかは分らない。何しろ当のこいさんは、今朝から肉体的な苦痛の方が激しいので精神的苦痛を顧みる暇はなかったし、ようよう苦痛が鎮まってからも、気落ちしたようにガッカリしてしまっているのである。啓坊も亦、お体裁を作ることにかけてはこいさん以上なので、表面の素振には何も変ったところは見せない。