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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 頁
幸子も夕方から起きて、努めて何事もなかったように食堂に出たが、貞之助は雪子の労をねぎらう意味で、もうその頃は貴重品になっていたバアガンディーの白葡萄酒を、乏しくなりかけた貯蔵の中から特に一本選んで来、自分で罎の埃を払い、気持のよい音をさせて栓を抜きながら、
「雪子ちゃん、もうこいさんはええのんか」
と、聞いたりした。
「はあ、もう心配あれしません。何せ衰弱してますのんで、もとのように回復する迄にはなかなかですやろけど。………」
「痩せてるか、そんなに?」
「はあ、あの円い顔が長うなって、頬の骨が飛び出てますねん」
「悦子、見舞いに行きたいなあ。―――」
と、悦子が云った。
「行ったらいかん? お父ちゃん」
「うん、………」
と云って、貞之助はちょっと眉を曇らしたが、でも直ぐ晴れやかな顔をして、
「行ってもええけど、伝染病やよってに、………お医者さんの許可がある迄はいかん」
貞之助が、悦子の前でこんな工合に妙子の噂を持ち出したり、悦子が妙子に会うことを必ずしも禁じないかの如き口ぶりを見せると云うのは、今日は特別に機嫌が良いせいなのでもあろうが、それにしても全く予想の外のことで、何かしら妙子の扱い方について考え直すところがあったのではないかと、幸子たちには思えた。