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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 頁
………が、その、真の闇になる寸刻前、落ち凹んだ川面から濃い暗黒が這い上って来つつありながら、まだもやもやと近くの草の揺れ動くけはいが視覚に感じられる時に、遠く、遠く、川のつづく限り、幾筋とない線を引いて両側から入り乱れつつ点滅していた、幽鬼めいた蛍の火は、今も夢の中にまで尾を曳いているようで、眼をつぶってもありありと見える。………ほんとうに、今夜じゅうで一番印象の深かったのはあの一刻であった。あれを味わっただけでも蛍狩に来た甲斐はあった。………なるほど蛍狩と云うものは、お花見のような絵画的なものではなくて、冥想的な、………とでも云ったらよいのであろうか。それでいてお伽噺の世界じみた、子供っぽいところもあるが。………あの世界は絵にするよりは音楽にすべきものかも知れない。お琴かピアノかに、あの感じを作曲したものがあってもよいが。………
彼女は、自分がこうして寝床の中で眼をつぶっているこの真夜中にも、あの小川のほとりではあれらの蛍が一と晩じゅう音もなく明滅し、数限りもなく飛び交うているのだと思うと、云いようもない浪漫的な心地に誘い込まれるのであった。何か、自分の魂があくがれ出して、あの蛍の群に交って、水の面を高く低く、揺られて行くような、………そう云えばあの小川は、蛍を追って行くと、随分長く、一直線に、何処迄も