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うつくしいにほんのれきし
美しい日本の歴史
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《美しい日本の歴史(うつくしいにほんのれきし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 頁
大大論
しかしこの人の逸話は前述「比丘尼史」の慧春尼と全く似ているから、後に誰かが転嫁して伝えたものかと思われる。
大大論
観光地などはべつとして、一般の落書き癖は、都会では近ごろ見られなくなったのではなかろうか。何でも言える、何でも表現できる、こう吾儘気儘のいえる社会では、もう落書き根性も立ち小便も催す壁も見あたるまい。
が、落書きにも国宝級がある。
正倉院御物の有名な「大大論」の人物画などそれである。きっと大昔の写経生の悪戯書きか、即興のスケッチでもあることだろう。写経料紙の端に、袍を着た頭(帽子)すがたの大男が、眼玉をむき、肩ヒジを張って、大議論をぶッている絵の落書きだ。さしずめ今なら総評幹部の大物にもなれそうな風貌とその頃のインテリジェンスの代表格といった所がよく出ている。
いやそれよりも愉快なのは、当時(約千二百年前)――聖武天皇の天平勝宝何年のころ、すでに今でいう公務員であったそれらの写経生たちが、ストをやっていた事実である。
もちろん、日本労働運動史の初ページは明治初めだが、そんな旗のない時代から、ばくぜんと、千二百年前の人間たちでも、原始ストともいえる疼きを見せていたことが、それらの正倉院文書の中に知るのだった。