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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

「誰が、あんな、鼻眼鏡……」

「マン坊の方はそんな気でも、まあだ、敬やんはあんたのこと、あきらめんというぞ。根が狡ン坊のうえに、大学出の智慧者じゃけえ、惚れたがメッチャラで、なにを企らむか知れん。気をつけんさいや」

「なんでやって来ても、負けやせんよ」

「そんなら、ええが……」

ひろい縁の麦藁帽の下から、きりッとしまった面長の顔が、なにかの思いをこめて、マンを見る。すこし鈍くはあるが、眼には意志的な光があり、黒く太い眉がたくましい。

マンは、時次郎の瞳にただよっている、その思いというのが、なにか、よく知っている。そして、マンの方も、時次郎にたいして、或る気持を抱いていた。

「マン坊、今夜、閑けえ?」

「うウン、今夜は、ちょっとばかし、用がある」

用はなかったけれども、水車小屋での事件が、どんな結果を生むか、閑であるとはとてもいえなかった。それどころか、マンは、今にも息をふきかえした「鬼」が、跡を追って来るにちがいないと、びくびくしているのである。

「そうか、閑なら、今夜遊びに行って、ゆるゆる話したいことがあったんじゃがなあ。……明日の晩は?」

「それも、わからんわ」