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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
そのぼんやりと霧をかけた瞳に、うす化粧しているお京は、夢幻の女のように、妖艶に映る。
「金五郎さん、逢いたかったわ。道後の初会のときから、あなたのこと、忘れたことなかったのよ。いつか、逢えると思ってた。今日逢えて、うれしい」
「わたしもですよ」
そんな出鱈目の言葉が、自然のように、口をついて出る。
「さあ、酌をさせて」
「お京さん」
「あい」
「あんた、さっき、なにか、わたしに話があるというたなあ?」
「もっと飲んでからで、いいわ」
盃が、梭のように、二人の間を往復する。金五郎も弱い方ではないが、お京の強さはおどろくばかりだった。金五郎と対等に飲んでいるのに、男の方は、深酒とともに、意識不明になって行き、女の方は、いよいよ、青くなって、冴えかえる。胸に一物あるので、酔わないのかも知れない。
「女なんかに、負けてたまるもんか。……馬鹿にすんな」
そんな負け惜しみを、くどくどと、くりかえしていた金五郎は、遂に、前後不覚に、酔いつぶれた。……
どれくらい、時間が経ったか。
ふと、眼をさました金五郎は、あたりを、きょときょと、見廻した。森閑と、静まりかえっている。先刻のどんちゃん騒ぎも、聯合組の仲間も、大広間も、いつの間にか消えて、六畳ほどの一室に、一人、寝かされている。