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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

しかし、時やんは一人息子であり、大川家を継いで、生涯をこの部落で終らねばならぬ。時やん自身も、引っこみ思案のところがあって、村を出る積極的な気持はない。彼の最後の理想は、柿ノ坂の郵便局長になることにあるらしい。

(そんなのは、いやだ)

と、マンは、思う。

表で、足音がした。牛小屋の前に来てとまった。

「マン坊けえ?」

父善助の声だった。

「はい」

と答えて、あわてて、兄林助の手紙の方を、ふところに隠した。

小屋の戸を開けた。マンより先に、犬が飛びだした。背に薪を負い、手に鎌を持った長身の父が立っている。

「なんじゃい、戸をしめこんでしもうて……」

「お父っあん、これ」

マンは、専売局からの封筒をわたした。ランプの明かりでそれを読む、善助の日やけした顔に、みるみる、狂喜にちかい表情が浮かびあがって来た。

「やンれ、よかったのう。万歳、万歳」

そういって、両手で、万歳の恰好をし、どんと、娘の肩をたたいた。

「おマン、お前も、うれしいじゃろうのう?」

「はい」

そう答えなければ、しかたがなかった。

囲炉裏端で、一家、にぎやかな夕食がはじまった。善助、イワ、長兄倉助、その嫁ミキ、その子の三歳になる松男、弟牛三、それに、マンの七人。