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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

自分が若かったら、入れあげる」といったところである。しかし、染奴がそれに煽動されて、急に、惚れたのではないことも、お京は知っていた。金五郎は、「飛鳥」には、自分の家のように出入りしていたから、染奴は、早くから、金五郎に思いをかけていたようであった。

二〇三高地髷に、染奴が結っているのも、今夜、このハイカラ頭で、金五郎の気を引こうという作戦らしい。また、よく似合った。

「染奴さん、待っててね。一緒に帰ろうよ」

「ええ」

そして、二人はつれだって、おナツの店を出た。

軽い汗ばみをおぼえるような上天気である。二人の下駄の音が、カラコロと澄んだ音で、青空の奥深くひびき登って行くようで、もう夏の気配がどこかに感じられた。一羽の鳶が、悠々と舞い、ときどき、笛のような声で啼く。

「染奴さん、ちょっと、話したいことがあるの。つきあってね」

「ええ」

若い染奴は、姉芸者として、お京には一目置いていた。従順である。

木柵でかこまれた町役場の横を抜けて、蛭子神社に行った。この古い由緒を持つ社は、石鳥居の下まで、洞海湾の波が来ていて、石段を洗っている。境内には、榎、杉、松、樟、などの大樹が、鬱蒼と繁茂して、昼なお暗い感がある。