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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

切れ長の細い眼は、なにかの愁いをふくんでいるように、青味を帯びている。

梅にも春の

色そえて

若水汲みか

車井戸……

踊りながら、お京は、ときどき、金五郎の方を見て、にこッと、笑う。金五郎が、呆気にとられた顔つきで、ぽかんと、口をあけて、自分を凝視しているのが、おかしくて仕方がない。そして、お京は、自分の美しさを誇示するように、さらに、あでやかに舞いながら、金五郎へ、モールス信号のような、ながしめの電波を送った。

「久しぶりでしたのね。博多以来、お逢いしたかったのよ。まだ、大切な用件があったのに、あなたは逃げておしまいになった。でも、あたしはあきらめません。今夜、あとで、逢って下さいね。きっとよ」

お京の眼の暗号は、はっきりと、金五郎へ、そのことを伝えていた。

しかし、踊りながら、お京の頭に、奇妙なものが、ちらついていた。昼間、「女髪結い処」の看板のうえを、しきりと戯れながら飛んでいた二匹の蝶、今にも、蜘蛛の巣にかかりそうなので、危いと思って、はらはらした。そのときは、ただ、蝶の危険が気にかかっただけであったのに、今、踊っている最中のお京の胸に、黄色い蝶の方が金五郎、白い蝶の方が自分であるような幻影が、浮かんでいるのだった。