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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

(こうまで、腐った心になっとろうとは、思わんじゃったが……)

門司以来、兄弟分として信頼しあって来た唯一の親友であったのに、訣別しなくてはならぬときが近づいたか? ――と、金五郎は、いいようもない寂寥感と、孤独感とにつつまれて、気が滅入った。

「オヤジさん、永田の親方がお見えになりました」

俊次が、取り次いで来た。

「今ごろになって、風邪を引いたそうじゃないか」

永田杢次が、にこにこ顔で、入って来た。ヨネと、息子の茂次平とが、後につづいている。

数日が、経った。

金五郎は、虚脱したような気持で、嘗て、経験したことのない、索漠とした毎日を過ごした。身体の調子は、すぐに恢復したので、仕事にも出たけれども、なにをやっても、まるで、張りあいがないのである。

マンのいない家の中は、あたかも、歯の抜けてしまった口のようだ。そして、それは、そのまま、金五郎の心に、似ていた。

なにもかもが、奇妙な風に、狂ってしまった。

(マンといっしょに、久しぶりに、故郷に帰って、道後の湯に、ゆっくり、入るつもりじゃったんじゃが……)

それも、もう、一人では、出かける気持にならなかった。