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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁
「承知です」
「おおきに。やっぱり、金さんはものわかりがええ。これで、三方、丸くおさまるというもんじゃ」
それから、金五郎は、「相違ナク、黒石家ニ養子ニ参リマス」という証文を書かされた。得意満面、ほくそ笑んでいる※から、蜜柑の代金をうけとって、悄然と、店を出た。
空になった馬車に乗って、金五郎と清七とは、道後温泉に行った。湯の町は、松山とはつづいている。
鍛冶屋の清七は、取引のなりゆきを、心配しながら、見ていたが、友人が、あんなにもいやがっていた黒石家の養子を承諾したので、びっくりした。馬車の前部に、肩をならべながら、「金坊、お前、ええのけ?」と、不審顔で、きく。
「ええ、ええ。どういうたって、仕方があるもんか。家の急場をしのぐにゃあ、もう、この一手じゃ」
「そがいにいうても、養子は一生のことぞな、もし」
「放っといてくれ。おれに、すこし考えがあるけに」
「そうけ?」
「それでな、清ちゃん、来るとき頼んだ箪笥の合鍵は、もう作ってもらわんでも、ええ。要らんことになった。今夜は、湯町で、やりっぱなしに散財しよう。もう、やけ糞じゃ。お前、つきあえよ」
「そら、つきあいはするが……ほんとに、金坊は、なにをしでかすか、わからんなあ……」