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たけをたずねる
茸をたずねる
飯田 蛇笏
線上閱讀飯田 蛇笏《茸をたずねる(たけをたずねる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,193 字 · 15 頁
日筋が蒼天に流れわたって、ふり仰ぐ真上にあかあかと見渡される。群を抜く鋒杉が見えると思うと茜色に梢を染められ、それがまた非常に鮮かに虚空にうかんで見える。四山の紅葉を振い落そうとするような馬の嘶きが聞えることもある。草刈が曳き後れた馬の嘶きである。時とすると秋天の変り易い天候が忽ちの間に四辺をかき曇らせ、見る見る霧のような小雨を運んで来ることもある。寒冷の気が俄に肌を掠めて来る。路の辺に紅の玉をつけた梅もどきの枝に尾を動かしている鶲は、私の近寄るのも知らぬげに寒さに顫えている。行き逢う駄馬が鬣を振わして雨の滴を顔のあたりへ飛ばせて来ることもある。蕭条たる気が犇々と身に応えてくる。不図行手を眺めると、傍らの林間に白々と濃い煙が細雨の中を騰って行く光景に出遭う。炭売りから帰る婦たちが大樹の下などに集って、焚火に暖をとる為の仕業であることがわかる。私も近寄って仲間に加わることがある。燃えしぶっていた焚火が俄に明るく燃え上り、火焔がすさまじい音と共に濠々と立つ白煙を舐め尽して終う。人の輪が少し後ろへ下って、各々の顔に束の間の歓びの情が溢れて見える。
知らず知らず時が過ぎ去って、樹間を立ち騰る薄煙のあたりに、仄かに輝きそめた夕月が見えたりする。