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あしはみていた

葦は見ていた

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《葦は見ていた(あしはみていた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 頁

青空文庫

計之介のほうに事情があり、このところ二年以上もこの家へはよりつかなかった。そのため深江は二十という年になってしまったのであるが、――彼女のようすには変ったところはなかった。計之介にはそれが、むしろ呵責であったが、しかしうれしさも大きかった。彼女に少しも変ったようすがなく、まえと同じように受け容れてくれるのをみて、彼は強い自責と深いよろこびとを、二重に感ずるのであった。

食事が終ると、計之介は別れを告げた。

「明後日ゆくよ」と東次郎が云った、「そのときすっかり話を聞こう」

計之介は頷いた。東次郎は玄関まで送って出た。

「松野老へはおれが知らせよう」東次郎は云った、「召使などもおれがなんとかするから、まず藤吉はゆっくり寝ることだ」

計之介は眼をそむけながら頷いた。

「松野老がどんなに喜ぶことか」

東次郎は呟くように云った。殆んど独り言のようであった。計之介は東次郎の顔を振返って見て、それから玄関を出ていった。

藤吉の家は竹屋敷という処にあった。

計之介が帰って一刻ばかりすると、家扶の松野伊太夫が、二人の下僕をつれて来た。松野は父の代からの家扶であるが、半年まえに自分から暇を取り、親類の家に寄食していたものであった。