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あしはみていた

葦は見ていた

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《葦は見ていた(あしはみていた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 頁

青空文庫

計之介は一人息子だったが、決してあまやかされるようなことはなかったし、生れつき温和しく、頭のいい子で、藩校ではよく褒賞を与えられた。――杉丸東次郎とは精心館で知りあった。東次郎は計之介より一つ年長で、精心館道場では俊秀といわれていた。計之介はついに彼に及ばなかったが、それでも上位の中軸くらいまでは使ったし、ときには東次郎と三本に一本くらいの勝負をすることもあった。

二十歳前後から、彼にはふしぎに人望が集まって、「やがて国老になるだろう」などという評が広まった。父が側御用を勤めたし、国老三席のうち、一つは中老から選出される定めなので、無根の評ではないが、そんな年ごろでそういう人望の集まることは、彼自身にはかなり重荷に感じられた。

――そんなことを気にするな。

東次郎は、しばしば彼を励ました。

――世評なんて勝手なものだし、国老になったっていいじゃないか、国老になったって悪くはないぜ。

――よしてくれ、おれは静かに暮したいんだ。

計之介は学問が好きだった。できることなら一生、静かに学問をして暮したかった。

二十三歳のとき、彼は深江を妻に欲しいと申し込んだ。