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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《蜘蛛の夢(くものゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 頁

青空文庫

」

言いかけて、延津弥は何か思い付いたように又罵った。

「まあ、ばかばかしい。それじゃあ、あたしが旦那の眼をぬすんで千生さんと……。まあ、途方もない。馬鹿もいい加減にするがいいわ。あたしも芸人だから、千生さんとひと通りのお附合いはしているけれど、何が口惜しくって、あんな寄席の前坐なんぞと……。お前さんもまた、そんな噂を真に受けて、あたしの所へ何の掛合いに来たんですよ。」

「別に掛合いに来たというわけじゃあないので……。」と、お兼の声もやや尖ってきこえた。「もしやここへ来やあしないかと思って……。」

「来ませんよ。来られた義理じゃあありませんよ。毒を入れたか入れないか知らないけれども、なにしろあのおはぎを食べたせいで、あたし達はあんな目に逢ったんですから……。つまり、千生さんはあたし達の仇じゃあありませんか。」

「そう言われると、お話は出来ませんけれど、あんな人間でも長之助はわたしの独り息子ですから……。」と、お兼は俄かに声を湿ませた。「どうしても身を隠さなければならない訳があるなら……。まあ当分はどこに忍んでいるにしても、先立つものは金ですから、ともかくも当座の入用にと思って、実はここに十両のお金を持って来たのですが……。