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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《豊島与志雄童話集(おつきさまのうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,569 字 · 336 頁
ところが、空がいつしか曇ってきて、寒い北風まで加わって、雪がちらちら降り出しました。甚兵衛は馬を雪にあてないように、途中の立場茶屋に二三時間休みますと、幸いにも雪が止みましたので、これならば泊まってゆくにも及ばないと思って、急いで家に帰りかけました。けれど二三時間休んだために、短い冬の日はもう暮れかけて、おまけに曇り日なものですから、途中で薄暗くなってしまいました。
「これは困った」と甚兵衛はひとりごとを言いながら、振り向いて馬の首筋を平手で撫でてやりました。「こう薄暗くなっちゃあ、お前も歩きにくかろうし、寒くもあろうが、まあ辛抱しなよ。そのかわり、家へ戻ったらうんとごちそうしてやるからな」
馬はその言葉がわかったように、ひひんと一声高くいなないて、しゃんしゃんぱかぱかと、鈴の音も蹄の音も勇しく、足を早めに歩き出しました。
そうして、人通りの絶えたたそがれの街道を、とある崖の下までやって来た時のことです。崖の裾のくさむらの中から、うっすらと積もってる雪の上に、猫くらいの大きさのまっ黒なものが、いきなり飛び出して来て、甚兵衛の前に両手をついて、ぴょこぴょこおじぎをするじゃありませんか。