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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,626 字 · 45 頁

青空文庫

「こんど取ったらあげるね」と長次は云った、「今年じゃなければ来年、げんまんだよ」

「よし、げんまんだ」

二人は右手の小指を絡ませて振った。長次の指が火のように熱く、けれども力のないのが登に感じられた。来年だぞ、と心の中で登は呼びかけた。そのためには生きなければならない、頑張るんだぞ長、こんなことで死んじゃあだめだぞ。――登は調剤すべき薬品の名を書き、使いに持たせて養生所へやった。使いの者にはわけを話して、今夜はこっちで泊るかもしれない、という伝言も頼んだ。午後四時ころに六歳のおみよが死に、日が昏れてから長男の虎吉が死んだ。死ぬとすぐに、他の者にはわからないように注意して、死躰を差配の家へ運んだ。残った子供は長次だけになったが、五郎吉や女房のおふみは、これらのことを知っているらしいのに、どちらもなにも云わなかった。養生所から届いた薬を、登は自分で調合し、煎じてのませた。長次はまったく受けつけなかったし、夫婦は黙って拒絶した。

「みんながこんなに心配してくれているのがわからないのか」登はしまいに本気でどなった、「こんな迷惑をかけたうえに、みんなの心配を無にするつもりか」