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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

線上閱讀海野 十三《赤耀館事件の真相(せきようかんじけんのしんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 頁

青空文庫

言わば、典型的な有閑階級に属する人間でした。そういう種類の人間は必ず何か趣味を持っているものなのですが、兄の場合には強いて挙げるならば三つの趣味とも娯楽ともつかないものを持っていました。

その一つは、麻雀でした。彼はこの勝負事に一時かなり熱中したことがありました。多分最初は、麻雀という時間のかかる競技が、彼のように多くの閑を持つ人間を、無聊から救ってくれたからでありましょう。しかし段々と競技をすすめて見ると、一か八かの勝敗から、その日、その月の彼の運命が勝負の中に織りこまれて来るのを、喜ぶようになったらしいのです。

あとの二つは、園芸と、物理学の実験とでありました。園芸の方は、半分は他人委せであったのにひきかえて、物理実験の方は一から十まで彼自身が手を下してやりました。それも人に煩わされることが多いというので、最近には、別に小さい物理実験室を、赤耀館から小一町も距ったところに建てて、時には一日中も其の中に立籠っていることがありました。彼の実験は、勿論、博士論文を作ろうとするわけでもなく、普通の物理実験教材に散見する程度のもので、無線電信の時報信号を受けたり、毎日の温度や湿気や気圧の変化を調べたり、又好んで分析光学に関するものをやっていました。