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じんるいのせいぞんきょうそう
進化と人生(上)
丘 浅次郎
線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁
それゆえ、かりに身をこの境遇において想像してみると、善悪という文字は全くその意味を失ってしまう。
また団体生活の充分完結している動物、たとえば蟻、蜂等のごときものの行為も善悪をもって評しがたい。なぜというに、これらの動物では各個体はただその属する団体の一分子としてのみ価値を有し、団体を離れ、単に個体としては少しも特別の個体価値を認めることができぬ。すなわち各団体はあたかも一の意志を持った個体のごとくに働き、これを組み立てている各個体はあたかも個体を造り成せる細胞のごとく、単に団体の意志に従うて働くのみである。言を換えていえば、これらの動物では各個体の精神は個体の利害のみに重きをおく小我の境を脱して、自己の属する全団体の維持繁栄を目的とする大我の域に達しているのである。蜂や蟻が終日忙わしく食物を探し集めたり、幼虫の世話をしたり、勉強しているのはすべて自分の属する団体のために役に立つばかりで、一つも直接にその一身のためにはならぬ。またもはや団体にとって無用となった個体は、他のものが集まって容赦なく殺し片づけてしまい、決して単に蟻であるから、あるいは蜂であるからというだけの理由で、蟻格を尊ぶとか蜂権を重んずるとかいう名義のもとにこれを助けておくことはない。