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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁

青空文庫

ただ人間では脳髄の中で大脳のみが大きくなって他の脳部をおおい隠すとおりに、知力のみが特に発達してそのため他の働きはかげに隠れ、ほとんどなきがごとき感を生ずるにいたったのである。

以上述べきたったごとく、人間の知力の道具なる大脳は、決して最初から今日のとおりにできたものではなく、人類の進化とともに一歩ずつ進んでついに現在の程度までに発達しきたったのである。それゆえ、その働く力も他の胃、腸、肺、肝等の臓腑と同じく、普通の状態のもとにあって、生存競争に加わり得る程度を限りとしてその以上には出ない。しかして平常に異なった状態のもとにおけば、この働きに変調が起こる。これらのことは知力によって事物を研究せんとする人々の一刻も忘れてはならぬところで、これを忘れると、知らずしらず空論に深入りしてついには誤りにおちいりやすい。人間の大脳の進化は前に述べたとおりであるが、今日の生存競争の状況に鑑みて、未来を推し測れば、今後ともなおますます進むものと断言せねばならぬが、大脳のさらに発達した世の中から今日のありさまをかえりみたならば、今日大学者の論ずることも、あるいは小児の戯言のごとくに見えるやもしれぬ。