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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(上)(じんるいのせいぞんきょうそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 頁

青空文庫

人道という字も戦争の口実としてしばしば聞くところであるが、列国間に用いる場合にはこの文字の意味はすこぶる曖昧である。しかしながら不得要領であるゆえ、自分の欲することを行なうための口実として用いるにはもっとも重宝なもので、今日までに人道のためと称して文明国のために攻め滅ぼされた野蛮人は何ほどあるやら知れぬ。文明国同志の間においても、人道のためという文句は、あたかもわが種属のためとあからさまに言うべきところをおおい飾るための符号のごとくに用いられているように見受けるから、これもやはり平和のためというのと同じく、一種の定式の文句とみなしてよろしかろう。手紙を認めるときに拝啓と書いても実際拝むわけではなく、頓首と書いても実際頭を下げる者は一人もないにかかわらず、これらの文句を省いては先方に対して失礼にあたるゆえ、その真実でないことは双方ともに充分に承知しながら、やはりこれらの文句が必要であると同じく、列国はいずれも平和を愛し、人道を重んじ、平和会議を主唱したり、敵を優遇する道を講じたりしているのである。されば平和の敵、人道の敵という言葉はこれを平たく翻訳すれば、わが種族の膨脹発達に邪魔をする奴らということに過ぎぬが、これと戦わざるべからざることはいずれの名称を用いても同じである。