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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁

青空文庫

自然界には数もなければ、寄せ算も引き算もない。数を寄せたり、引いたり勘定するのは、人間が勝手にすることである。しかるに十から三を引けば七が残り、七から二を引けば五が残るというように数を勘定する習慣がつくと、何物にもこの方法をあてはめる癖が生じ、生きた人間と死んだ人間との間に、若干の差があるのを見ると、直ちに引き算や足し算を始め、生きた人マイナス死んだ人は命、死んだ人プラス命は生きた人というように考え、生きた人が死んだ人になる時には、命だけがどこかへ逃げていったものとみなす。これは境界のないところに勝手に境界を造り、切り離すべからざる物をしいて切り離しているのであるから大きなまちがいである。覚めた人と、眠れる人との差別を言い現わす言葉とすればまちがいは起こらぬが、引き算式に覚めた人マイナス意識は眠れる人として、意識だけがあたかも独立して存在しうるもののごとくに考えたならば、これまた前のと同じ誤りにおちいっている。あるとき、何かの書物に、物から色を去れば形が残り、形を去れば性が残ると書いてあるのを見て、このような頭で考えられては、いかなる名論が出てくるか分からぬと恐ろしく感じたことがあるが、これなどはプラス、マイナスに捕われたもっとも好い標本である。