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とおのものがたり

遠野物語

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《遠野物語(とおのものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 頁

青空文庫

二

伝えいう、遠野郷の地大昔はすべて一円の湖水なりしに、その水猿ヶ石川となりて人界に流れ出でしより、自然にかくのごとき邑落をなせしなりと。されば谷川のこの猿ヶ石に落合うもの甚だ多く、俗に七内八崎ありと称す。内は沢または谷のことにて、奥州の地名には多くあり。

○遠野郷のトーはもとアイヌ語の湖という語より出でたるなるべし、ナイもアイヌ語なり。

二 遠野の町は南北の川の落合にあり。以前は七七十里とて、七つの渓谷おのおの七十里の奥より売買の貨物を聚め、その市の日は馬千匹、人千人の賑わしさなりき。四方の山々の中に最も秀でたるを早池峯という、北の方附馬牛の奥にあり。東の方には六角牛山立てり。石神という山は附馬牛と達曾部との間にありて、その高さ前の二つよりも劣れり。大昔に女神あり、三人の娘を伴ないてこの高原に来たり、今の来内村の伊豆権現の社あるところに宿りし夜、今夜よき夢を見たらん娘によき山を与うべしと母の神の語りて寝たりしに、夜深く天より霊華降りて姉の姫の胸の上に止りしを、末の姫眼覚めて窃にこれを取り、わが胸の上に載せたりしかば、ついに最も美しき早池峯の山を得、姉たちは六角牛と石神とを得たり。