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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁

青空文庫

滅多に逢う瀬もなかったことだろうし、いつ親たちの許しを受けて、家へ引取れることか、その当てもなかった」

「素人じゃないのか」

「去年の川開きの晩、友達に誘われて、始めて逢ったという、水茶屋の女ですよ」

「それはまた変っているね」

大家の若旦那の相手なら、入山形に二つ星の太夫でも不思議はないのに、水茶屋の茶くみ女は少し物好き過ぎました。

「世馴れない若旦那の初恋だ。相手を選り好みするほどのゆとりはありゃしません」

「話はそれっきりか」

平次は先を促しました。八五郎の話はサワリが多過ぎて、ときどき筋が通らなくなります。

「吉田屋の両親も、最初から泣かされてしまいました。倅が生きていたら、敷居を跨がせる女ではなかったでしょうが、倅が死んで気が挫けているところへ、四十八本の色文を持込んで、眼の前で髪の毛を切られたのですから、一も二もありません」

「それで、吉田屋では引取ることになったのか」

「昔吉田屋の隠居が使ったという、裏の離屋に手入れをして、取あえず其処へ入れました。まさか母屋へ入れるわけにも行きませんが、そうかと言って死んだ倅の色文を四十八本も持っている、滅法綺麗な切髪の女を外へ投り出すわけにも行きません」