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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁

青空文庫

五

文三郎はハッとした様子で顔を挙げました。その眼は脅えきっておりますが、平次の問いを肯定も否定もしようとはしません。

少し病身らしいが、その代り神経の鋭どそうな少年は、嘆願するように平次の顔を仰ぐのです。

五

「八、お前は両国へ行ってみろ。弁天屋で訊いたら、お半と吉田屋の若旦那の仲が、まるっきりわからないことはあるまい。若い者の色恋は、当人同士が秘し隠しに隠しているつもりでも、思いのほか他の者が感付いているものだ」

「へエ」

「それからお半に言い寄った男が他にもあるだろうと思う。念入りに訊き出してくれ」

「親分は?」

「家で昼寝でもしているよ」

平次と八五郎は、それっきり別れました。明神下の自分の家に帰った平次は、本当に枕まで出させて、そのまま昼寝をしてしまったのです。こうして雑念に煩わされずに、一筋に物を考えるのが平次のやり方の一つでもありました。

昼を大分廻ってから、八五郎は帰って来ました。

「面白いことがわかりましたよ、親分」

「お半と彦次郎が、恋仲でもなんでもなかったという話だろう」

「あ、どうして、それを親分」

「お前が飛んで歩いてる間、俺はこんな夢を見ていたのだよ、――まア、そんな事にかまわずに覗き込んだだけの事を話せ」