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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九) 全十冊
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁
九
「跛者だ――親分」
「そのとおりだよ、――この辺に足の悪いのは?」
「あの浪人者の娘――でも男下駄は変ですね」
「女が男下駄を履いて悪いという法はないよ」
「なるほどね、――すると、お専の喉を絞めた曲者は、わかっているじゃありませんか。行ってみましょうか」
「いや、早合点しちゃいけない」
平次はたいして急ぐ様子もなく、寛々とした足取りで、浪人者立花久三郎の家に近づきました。
九
もう昼近い日射しです。娘のお妙がたった一人、縁側でしょんぼりと、朝倉屋の方を見ているのが、八五郎の太い神経にも、わびしく映ったのでしょう。
「あの娘がね、親分。あんな顔で」
「黙っていろ」
たしなめて平次は、庭木戸を押しあけました。
「お嬢さん」
「あ、平次親分、向うから来るのがよく見えましたよ」
「お父様と、松次郎さんは?」
「二人とも留守ですよ」
娘の顔には、昨日の絶望的な色はありませんが、大きい屈託が、その弱い身体を押しひしぐらしく、日蔭の花のような痛々しさと、言うに言われぬ、病的な美しさを感じさせるのです。
「ちょうどよいあんばいで――少し伺いたいことがあるんですが」
「…………」
娘は黙って、縁側に座布団を二つ持出しました。