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かぎからぬけだしたおんな
鍵から抜け出した女
海野 十三
線上閱讀海野 十三《鍵から抜け出した女(かぎからぬけだしたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,188 字 · 43 頁
三十分ぐらいもグルグル歩きまわった末、祭りの灯でほの明るい空を大きな鐘楼の甍が抜き絵のようにクッキリ浮かんでいるのを発見して、僕は歓喜した。
鐘楼のかげの庵室を探しあてることなどは、もはやさしたる苦労ではなかった。庵室の障子には熟しきった梅の実のように、真黄色な灯がうつっていた。
庵室の扉に、ソッと手をかけたとき、
「誰方?」
という低い声が、うちから聞こえた。
「……」僕は思わず手を放して黙したが、
「これは街で、庵主さまのお名前を教えられてきたものでございます」
「いま明けて進ぜます。しばらく……」
うちらに微かな衣ずれの音があって、やがて扉のかけがねがコトリと音をたて、そして入口が静かに開かれた。
「わが名を教えられた、と。まずお入りになって事情を話してきかせて下さい」
尼僧は僕が男子であるのに気がつかないような様子で、なんの逡巡もなく上へ招じ入れたのだった。
土間の内に、四畳半ほどの庵室が二つあり、その奥まった室には、床に弥陀如来が安置されてあって油入りの燭台が二基。杏色の灯がチロチロと燃えていた。その微かな光の前に秀蓮尼と僕とは向いあった。――尼僧というが、低い声音に似ず、庵主は意外にもまだ年齢若い女だった。