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もん

門

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《門(もん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,830 字 · 278 頁

青空文庫

と教えた。

小六にはいかに詳しい説明も腹の足しにはならなかった。ただ、

「そうですか」と云ってむずかしい不満な顔をして宗助を見た。

「仕方がないよ。叔母さんだって、安さんだって、そう悪い料簡はないんだから」

「そりゃ、分っています」と弟は峻しい物の云い方をした。

「じゃおれが悪いって云うんだろう。おれは無論悪いよ。昔から今日まで悪いところだらけな男だもの」

宗助は横になって煙草を吹かしながら、これより以上は何とも語らなかった。小六も黙って、座敷の隅に立ててあった二枚折の抱一の屏風を眺めていた。

「御前あの屏風を覚えているかい」とやがて兄が聞いた。

「ええ」と小六が答えた。

「一昨日佐伯から届けてくれた。御父さんの持ってたもので、おれの手に残ったのは、今じゃこれだけだ。これが御前の学資になるなら、今すぐにでもやるが、剥げた屏風一枚で大学を卒業する訳にも行かずな」と宗助が云った。そうして苦笑しながら、

「この暑いのに、こんなものを立てて置くのは、気狂じみているが、入れておく所がないから、仕方がない」と云う述懐をした。

小六はこの気楽なような、ぐずのような、自分とは余りに懸け隔たっている兄を、いつも物足りなくは思うものの、いざという場合に、けっして喧嘩はし得なかった。