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せつま

雪魔

海野 十三

線上閱讀海野 十三《雪魔(せつま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 13,355 字 · 27 頁

青空文庫

魔神は見えるかい」

「いや、今日は出ていないや」

雪はやんでいた。見とおしはよかった。地蔵の森の木立も、硝子にとおしたように、はっきり見えていた。なるほど、五助のいう魔神らしき怪しい影は何も見えなかった。

「今日は足跡もついてないや」

五助は、森の前を通り抜けるときに、そういった。彦太は笑った。しかし五助は笑わなかった。

それから一里の苦しい雪の山道が始まった。折悪しく急に風がかわって、粉雪が渦をまいて落ちだした。いよいよ吹雪になるらしい。二人の少年は、道の真中に立ちどまって、魔法壜からあつい茶をくんで呑み、元気をつけた。それからまた雪道へ踏み出した。

二時間あまりの苦しい登山がつづいた。二人の少年は、全身汗にまみれ、焼けつくような熱さを感じた。

「五助ちゃん。まだ兄さんの雪穴までは遠いのかい」

彦太は、雪になれていないので、ややへばったらしい声を出した。

「もうすぐだ。あそこに峯が見えているだろう。あの裏側だから、そこの山峡を過ぎると、観測所の雪穴が見え出すよ」

彦太は返事の代りに、重い首を振った。

そのときであった。とつぜん四、五発の銃声が聞えた。どどん、どんどんと、はげしく雪山に響いた。