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せつま

雪魔

海野 十三

線上閱讀海野 十三《雪魔(せつま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 13,355 字 · 27 頁

青空文庫

彦太は五助を追いつめた。五助は見るもかわいそうなほど悩みの色をうかべていたが、やがて決心したものと見え、立上って彦太の傍へ席をうつした。そしてあたりを見まわした上で、彦太の耳の近くで低い声を出した。

「誰にもいっちゃいけないよ。そして君もおどろいてはいけないよ」

「誰がそんな秘密をもらすものかい。もちろん、おどろきやしないよ」

「さ、どうかなあ。で、その山というのはね、あの青髪山なのさ」

「えっ、青髪山! あの、誰も近づいちゃいけないという……」

「大きな声を出すなよ」

ふーんと彦太は呻った。彼の顔色は、とたんに青ざめていた。青髪山か。青髪山ならたいへんである。青髪山には昔から魔神がすんでいるという話で、そこへ入った者は無事に里へもどれないそうだ。猟師だって、どんないい獲物を追っていても、その青髪山には近づきはしない。

そのような怪山の雪の下に穴を掘って観測を始めた一造兄さんが、誰にも語るなと命令したのはもっともだ。しかし一造さんは勇気がある。それはともかくあの奥深い青髪山まで、丈余の雪を踏んで三日ごとに兄のため食物をはこぶ友の身の上を考えると、気の毒でならなかった。