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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

わたしによ」

子供につれて大人までが、大変な騒ぎ。何かしらと思って、宅助がトロリと眼をすえて見ると、舞台の手欄にすえつけてある、遠眼鏡という機械。

その遠眼鏡を中心に、参詣の男女が、一家族のように楽しんでいるのを見ると、宅助は、平和な家庭の垣を隙見した継子と同じさみしみを感じて、自分も、仲間入りをしたくなった。

口癖のように――大阪が恋しい、大阪が恋しい、と嘆いていたお米を嘲笑って、

「おれなんざ、故郷も生れた家も、思いだしたことさえねえがなア」

といったことのある宅助だが、こののどかな社頭で、娘を連れた母、孫を伴う老人、幼い者をよろこばしている年上の者などを見ると、やはり、家をもつ人、愛の持ちあえる人たちは、いいなあ、倖せだなあ、と涎が出るほど羨ましくなる。

「みなさん、お揃いでご参詣ですかい。へ、へ、へ、へ、……。いいお天気だ、こんな日は遊べるね」

吾を忘れて、その側へ、いつか宅助はヒョロリと寄って行って――

「なにしろ、べらぼうにお日和がようがす。浪華の町の繁昌や千船百船の港口も、ここからはまるみえだ。ネ、そちらのお嬢ッちゃん」

と、蟇蛙が立ったような中腰でフーッと酒臭い息を吹っかけたもので、遠眼鏡に興じていた人たちの眼が、ちょっとそのほうへひかれたが、誰も相手にはしなかった。