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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「じきにお戻りなさいましょうか」

「うむ、船の出るまで!」

フイとどこかへ見えなくなった。

それを眺めて宅助も、

「あ! おれもこうしちゃあいられねえ」と塵をはたいて跳ね上がった。

「早く来てくれりゃいいが、何をしているんだろうな、お米のやつは?」

と独り言にじれて、饅頭笠を持ったまま広い空地へさまよいだした。

「おお、あぶないぜ」

後に残ったうどん屋は、丼を洗いながら床几に居眠っている子供を眺めて思わず笑った。

「可愛い子だな、疲れているといっていたが、どこから来たんだね」

空腹をみたされて急に眠気ざした子供は、それに返辞もしないで時々縁台から転げそうになっていた。

「は、は、は、罪はないな。だが、そこで居眠っていちゃ危ないから、今おじさんがいい按配にしてやろう、こっちへおいで、こっちへ――さあさあここならいくら寝ぼけたって腰掛から落ちる心配はない」

と小屋の中へ連れてきて、その子供の寝床を作ってやろうという考え――何気なく奥に見えた荷物のかぶせになっている蓆を五、六枚めくり取ると、その下から金紋のついた青漆つづらが三つ見えた。

金紋に怖れをなして、うどん屋は抱えただけをソッと持ってきて、向う側の隅へそれを重ねてやる。