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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

で、雑人たちが落ちついた一番最後に、竹屋三位卿と啓之助とは、四国屋の提灯に囲繞されて、送りこまれてきた。それと見ると、松兵衛という老船頭、つづらについて阿波へ行く手代の新吉、ばらばらと駆けてきて、三位卿を艫寄りの屋形へ案内した。

「松兵衛や、心得てはいるだろうけれど、ずいぶん気を配って、途中御無礼のないように頼みますよ」

お久良はこういって竹屋卿の前へ進んできた。

「では三位卿様――」と腰をかがめて、「海上御無事にお渡りを祈っております」

「ウム、何かと世話をやかせたの」

「まことに行届かぬことばかりでした。それに御覧の通りな商船。お席もむさ苦しゅうございますが、どうぞお忍び下さいませ。また何かの御用は松兵衛に仰せつけ下さいますように。では森様もごきげんよう……新吉も頼みますよ」

お久良が陸へおりると同時に、船は天神岸を離れて粘墨のような黒い川波へゆるぎ出した。二百石船といえば十四反帆、苫数八十四枚、水夫十六人、飲み水十五石積だ。それにかなりの便乗者と雑貨雑殻がミッシリ入っているので、船脚もズンと深く沈んでいる。

船は流れに乗りだした。雑音のひびきも徐々に遠く、大川の中ほどをきわめてゆるく押しだされてゆく。