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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁
「へ、へ、へ、へ。まことに、妙なことをきくようですが、私の身寄りの者で、今は、大勘さんの家にお世話になっているというような噂を、ちょっとよそで聞いたもんですからね……それで、何ですが……じゃ、そんな方はおりませんか?」
「いつ頃のことだい、それやあ」
「さようで……」
と、額に平掌をあてて、わざと考えるふうを装いながら、にわかに、思いだしたように、鼻紙へ一分銀を一ツ包んだ。
「兄哥、これやホンの少しだけれど」
「いらねエや、お前は旅人じゃないか。旅人からそんな物を貰うと、部屋の者に叱られら」
「なアに、誰がそんなことをしゃべるもんですか、まア取っといておくんなさい、私だってこうしてお世話になれば、旅籠賃というものが助かっているんですから……。エーところで、その若い男と女の客が、多分、こちらへ来たろうと思うのが、そうですネ、今から五十日前の前後か、それから後のことなんですが、よく考えてみておくんなさい、きっと、お心当たりがあるでしょう」
「ああ、そうか……」
「知っているね!」
と眼八、一分銀を握らせたその腕くびをギュッとつかんで、
「それごらんなせえ、やっぱり、お前さんが忘れていたんだ」