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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁
当夜――ふなべりを傾けて阿波方の納戸船がぶつかってきた刹那、四国屋の船のみよしから、お綱をひっかかえて激浪へ身を躍らせた弦之丞の行動は、あえて、殺到した追手におどろいて、進退きわまったのではなく、あのことはなくとも、当然、なすべきことを勇敢にやってのけたまでであった。
そして、あの晩の暴風と、弦之丞の運命が窮極にまで行ったと見えたことが、それから後、二月あまりの経過とともに、すっかり阿波の要心をゆるませ、かなり目ばしこい三位卿にしてからが、一度は、弦之丞の最期を漠然と信じたものだ。
眼八は、息を内へひいて源次の自白を聞いていた。
かれも、大阪以来の顛末は承知していたが、こんな裏面があろうとは、想像もつかないこと、潮びたしの刀から足をつけてここに到ったのは、自分ながら、あやまちの功名という気持がする。
「そうか! ……」
と太い息と一緒に、聞き終って、
「その晩傭われた船頭、誰と誰だか、覚えているだろうな」
「存じません。へい」
「徳島訛りか、それとも日和佐の船頭か」
「この辺の者ではなく、おそらく、抜荷屋渡世の仲間だろうと思うんで」
「抜荷屋か? ……」と眼八も少しウンザリした顔だ。