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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁
「ご親切だけれど、それに及ばない。弦之丞様は、わざと捕手を釣りこんで、麓のほうへ駆けだすから、後で三人はここから先に、土佐街道の寒葉へ出て、そこで待ちあわしていてくれろとおっしゃったのだから」
「ですけれど、あの人数に囲まれちゃあ……」と、大勘が不安らしくいうのを、お綱は、微笑んだきりで、自分から先に裏山の道を上りだした。
そして、予定どおりに寒葉の近くで、後から来た弦之丞と落ちあった。かれの手甲と裾の二所三所に、黒い血痕がついていた。大勘は、怖ろしいような、不可解なような顔をして、歩をともにしてゆく、その人の横顔を眺めていた。
土佐街道が白々と明けてきた頃――四ツの影は、牟岐の上流から本道と岐れて、笹見、西又、入道丸、いよいよ深い奥海部の山地へ分け入っていた……。
翌日。
こんもりした槙の森蔭で、わずかな眠りをとった後。
大勘はふところから一枚の山絵図を出して弦之丞に見せた。お綱もそばへ寄って眼を落した。剣山の山絵図である。
源次は森を出て見張っていた。こうしている間も、日和佐から殺到してくるであろう捕手の跫音が聞えるようでならない。
「まるで、道がないような所です」