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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

いいか、もし突き止めたら、礼は幾らでもするからな」

「だって私は、お前さんの宿というものを、聞かして貰ったことがないのに」

「俺か。おれは二、三日前から、安治川岸の阿州屋敷に住んでいる」

「阿州屋敷というと?」

「勘の鈍い女だな、阿州屋敷というのは蜂須賀家の下屋敷、そこのお長屋にいるというのよ」

すると、その時、ふたりの側をすりぬけていった往来の女が、蜂須賀と強くひびいた今の言葉に、ハッとしたかのようにふりむいた。

女は、いぼじり巻に、珊瑚の粒をとめている年増だった。しかし足を止めるとすぐに、孫兵衛の鋭い注視がすわったので、そのうろたえた目をお品にそらし、愛嬌よく笑みあって、何気ないさまに行き過ぎる。

お品へ目で挨拶して行った珊瑚の女を、孫兵衛はジッと見送っていたが、やがてその年増の姿は、同じ河岸筋の川長の店へ入っていった。

「誰だ! 今の女は」

こうお品に訊いているところへ、さっきからあなたにいて、待ちくたびれていた旅川周馬と天堂一角が、苦々しげに近づいてきた。そして、

「お十夜、まだ話がすまんのか」

と皮肉れば、一角も尾について、

「売女じゃないか。そんな者と、往来中で、何をしているのだ」