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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

時機は来た――悪魔め!

万吉は雀踊りしたい気もちを抑えて、幾たびも、鴻山の手紙についてきた、周馬の筆跡をみつめた。

大阪へ上陸った旅川周馬は、身辺の危険をさとって、わずかな縁故をたよりに、酒井讃岐守の蔵役人、本田某の屋敷の奥に身を匿ってもらっている。

ほとぼりのさめたところと隙を狙って、江戸へ走ろうという魂胆。――なぜかまた、本田某は周馬の口に乗せられて、あくまで彼を匿いだてした。

奸智な狐の隠れこんだ穴が悪い。

大阪城代の蔵屋敷、ことに、本田某は酒井家の権臣で、指もささせぬぞというふうがあった。どうしても周馬がその門を出ないうちは、秘帖を奪り返すこともできない。

阿波のほうでも、うすうす周馬の潜伏をつきとめてはいた。

しかし、これも手が出ない。

初めは万吉も阿波のほうでも、根くらべに、昼も夜中も蔵屋敷を見張っていたが、これでは、周馬がそこを出るはずがないと察して、わざと近頃は、双方で少し見張りをゆるめていた折。

吉報は思わぬ方角から来たものである。

それからしばらく、中二階ではひそかな話し声がつづく。

お吉は、静かに箪笥をあけて、調えておいた肌着や用意の品をもって、静かに、二階の梯子を通った。